政治と音楽

政治と音楽

今の日本では、政治と音楽の関わりについて考えることは少ないかもしれません。欧米に比べて政治的な問題を歌にするアーティストも少数派ですしね。忌野清志郎さんみたいな歌手がもっと増えればいいのに、と思うくらいです。

けれど、政治と音楽の間には昔から興味深いエピソードが多くあります。

ナチスとワーグナーの関係はよく知られています。ヒトラーが熱狂的なワグネリアン(ワーグナ―のファンのことです)だったので、ワーグナーの音楽はナチスの式典でよく演奏されました。そのために今でもイスラエルのコンサートではワーグナーが厳禁となっているほどです。

また、あまり有名ではないのですが、江文也という作曲家がいます。この方の人生は政治に翻弄されました。彼はもともと台湾出身なのですが、昔の台湾というのは日本の領土なのですね。だから、若いときは日本に来られて、

「肉弾三勇士の歌」という戦時歌謡を唄っていました。

第二次大戦のさなか、彼は妻子を残して中国大陸に渡り、そこで音楽学校の教鞭をとっていたのですが、終戦によって職と日本国籍を失ってしまいます。そこで日本の家族とは離ればなれとなってしまいました。

彼は大陸で再婚して、音楽学校の教授として人生の再スタートをきるのですが、あの文化大革命で楽譜は全て焼かれてしまいました。多くの知識人がそうなったように、強制労働行きになりましたが、それでも密かに作曲を続けました。

彼の作曲した音楽の多くは、アジアンテイストでどこか懐かしい感じのするものですが、こうしたエピソードを踏まえるともの悲しい気分にさせられます。